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グランピング経営の始め方

2015年の「星のや富士(運営:星野リゾート)」の開業から注目を集め続けているグランピング。
ホテルや旅館と比較して事業性が高く、グランピング経営に関心を持つ事業者は増え続け、2020年には、全国で約300のグランピングを冠した施設が開業しています。
今回は、拡大し続けるグランピング市場への参入を検討されている事業者の方に、参入を考えるポイントをお伝えしたいと思います。

まず、グランピング施設の開業場所をどこにするのかという点について。

グランピング経営① ~開業エリアの検討~

立地の選び方

基本的には、人口の多い場所から距離が近いエリアの成功確率が高いです。距離の目安としては、50㎞〜150㎞。車で2時間ほどでアクセスできる距離が目安です。
150㎞以上の距離にあっても経営的に成功しているグランピング施設はあります。遠隔地の成功条件は、2人利用のユーザーをターゲットにすること、また特徴的な外観や食事メニュー、ロケーションであることが必要となります。

 

土地の選び方

風光明媚で景色の良いロケーションが理想ですが、なかなか見つけるのが難しいと思います。5000㎡以上あれば、眺望に恵まれない場所でも、施設づくりで世界観を生み出し、成功している事例もあります。
眺望の良い場所に多い傾斜地については、できるだけ緩やかな土地を選びましょう。傾斜が強すぎると、ウッドデッキ工事や建物の基礎工事の費用がかさみ、当初想定通りの施設経営が難しくなるケースもあります。

 

各種法規制への対応

グランピング経営に関わる法律としては、「都市計画法」、「建築基準法」、「旅館業法」、「水質汚濁防止法」、「自然公園法」などがあげられます。
ロケーションは抜群でも、規制関係で開業が困難なケースもあります。
事前協議を行わず施設経営に着手して、後々トラブルになっているケースも散見されます。開業検討エリアの土木事務所、保健所、都市政策課、上下水道課には土地購入や賃借契約を締結する前に相談に行くことが望ましいです。
また、自然公園法の特別地域に該当する場所での開業を検討する場合は、環境省(環境事務所、自然保護課など)に事前相談が必要となります。

 

グランピング経営② ~グランピング施設のコンセプトづくり~

HP写真から逆算する

宿泊事業では新規ユーザーは客室、食事、施設全体の雰囲気など実物を見ない中で購入の判断を行う必要があります。ホームページの写真の良し悪しは、予約を入れるか否かの決定に非常に大きな影響を及ぼします。グランピング経営の成功可否は「魅力的な画像や動画」にかかっているといっても過言ではないほど、「見た目」は重要です。
グランピング開業前には、いくつか施設の見学や調査を行っていただき、検討中のロケーションで、どのような施設を作るのかイメージしていただくことがとても重要です。

 

「閑散期の頭」で考える

グランピングの閑散期は1月、2月です。
グランピング経営を考える上では、この1月、2月の冬の時期の集客をどうするのかを考えると成功確率があがります。
冬の集客には、施設全体のカラーリング、温泉(個別風呂は強い)、寒さがしのげるBBQスペース、薪ストーブ、キャンプファイヤー、イチゴ狩りなどのコンテンツが威力を発揮します。
全国グランピング協会がプロデュースに関わっているグランピング施設では、上記のようなコンテンツをできるだけ取り揃えています。特に薪ストーブでグランピング料理を作るプランは人気があります。

 

競合グランピング施設とのバランス

主要商圏からみて、自施設よりも近距離に競合施設がある場合は、特に入念に事業計画を組む必要があります。基本的には競合施設を上回る機能を考える必要があります。
予算的に厳しい場合は、計画棟数を減らしてでも、ハード面を充実させることをおすすめします。ハード面の充実はトイレ、入浴設備、専用面積、ペット対応、共用設備、アクティヴィティ、付帯サービスの7つの観点で検討しましょう。
「価格で下をくぐる」はグランピング経営を難しくしますので、基本的には進んではいけない方向です。

 

グランピング経営③ ~収支を合わせやすい参入パターン~

ホテル、旅館併設型グランピング

ホテル、旅館併設型グランピングは、特に人件費負担が最小化できますので、経営的に成功する事例が多くなっています。チェックイン、チェックアウト業務や清掃業務、食事提供業務を既存のホテル・旅館の人員でこなすことができるアドバンテージは、かなり大きいものです。さらに温泉施設など大浴場の活用ができる場合はイニシャルコストの大幅削減にもつながります。
また、旅館業法の申請についても変更申請で対応できるなど、旅館、ホテルの運営事業者様が検討される場合は、スムーズにグランピング経営に参入できるケースが多くなっています。

 

温浴施設併設型グランピング

温浴施設併設型のグランピング施設も成功確率が高いです。特に評判の良い温泉がある場合は、冬季の集客に大きなアドバンテージとなります。グランピング施設の開発にあたっては、温浴施設の設備投資やランニングコストは大きな比重をしめます。建屋の建築費や排水設備は大きな負担となるため、入浴設備をコインシャワー程度で事業運営をしているグランピング施設も数多くあり、このような施設に競合有意性が高くなります。

キャンプ場コンバージョン型グランピング

全くの未開発の土地を活用するケースに比べると、キャンプ場をリノベーションしたグランピング施設はイニシャルコストが小さくてすみます。基本的にグランピング施設は、広い敷地を前提に検討されるケースが多く、未開発地の場合は開発許可申請や開発工事に多くの時間や労力が必要となります。キャンプ場をリノベーションするケースの場合は、建築物を前提にしない事業計画であれば、時間と費用を圧縮できる可能性があります。
また、管理棟が設置済みのキャンプ場であれば、その設置コストも抑制でき、大きなアドバンテージとなります。

 

地方自治体の公募提案制度

近年、地方自治体が、所有の遊休地活用アイデアを募集する事例が多くなっています。重厚長大な建築物を前提としないグランピング事業と行政土地は相性が良いです。
借地料も非常に安価に設定されているケースも多く、今後は自治体所有の土地でグランピング経営が展開される事例が増加すると考えられます。
廃校や公営キャンプ場を活用したグランピング施設も開業されており、事業検討エリアの情報収集をすれば、開業可能な案件が見つかるかもしれません。自治体のホームページや直接問合せで魅力的な物件が発掘しましょう。

 

グランピング経営④ ~テント、トレーラー、コンテナのどれを選ぶのか~

ドームテント型グランピング施設

2019年以降に開業しているグランピング施設ではドームテントを採用する事例が多くなっています。現時点のグランピングの主流といえるかと思います。
実際にユーザーアンケート(WEB調査)でも、ドームテントの人気は高く、管理やメンテナンスのしやすさもあって、2021年の開業施設でも数多く採用される見通しです。
現状の開業施設の大半がドームテントを採用すると考えられるため、今後は競争が激しくなると予想されます。2022年以降の事業参入を検討されている事業者様は、エリアによっては、他の選択肢を検討された方が良いかもしれません。

 

トレーラー型グランピング施設

トレーラーは部事な印象があるため、ドームテントと比較すると集客は難しくなります。建築基準法上の取り扱いにも注意が必要で、輸入トレーラーで事業を検討される場合などは、該当エリアの土木事務所に事前相談に行った方が無難です。
台風や豪雪が予想されるエリアでの開業には、頑丈なトレーラーは利点も多く、内装の仕上げ方や施設の雰囲気づくりによっては、人気施設を目指すことも可能です。

 

建物(コテージ・キャビン)型グランピング施設

建物であれば、自由設計で検討できますので、個性的なグランピング施設づくりが可能です。ただし、イニシャルコストはトレーラーやテントで検討するケースよりも、かなり大きくなる想定が必要です。

全国グランピング協会では、テント生地を活用した建築物で個性的な商品を開発中です。2021年3月頃には設置完了となりますので、ご関心がある方はお問合せ下さい。

 

グランピング経営⑤ ~開業予算と収支計画のポイント~

イニシャルコストを見通すポイント

まず、都市計画法の対応から検討します。大規模な開発工事が必要になるか否かがとても重要です。特に10000㎡を超える開発許可申請は、かなりの時間を必要としますので、グランピング施設の開発地としては、厳しいです。
また、水道、電気、排水関係のインフラ整備条件も重要です。未開発地の場合は、上水の引き込み工事に相当額の負担が必要になるケースも多く、特に注意が必要です。
海や湖の近くでは、排水処理についても事前調査が必要です。湖や川に放流制限があるケースもあり、イニシャルコストに大きく影響します。また、海への放流には、漁協の同意が必要なケースも多く、時間を要することもあります。

他にも用途地域、防火、自然公園法、景観条例など専門的な知識がないと対応が難しい場合もあります。「わからないことが多く心配だ」と感じられる方は、ご相談に応じることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

儲かるグランピング施設の条件(客室単価・オフシーズン・食事提供)

グランピング施設の経営で最も大事な指標はADR(客室単価)です。
この理屈はリゾートホテルや旅館でも共通です。観光系の宿泊業態では、売れる日と売れない日は、ある程度共通しています。日本は基本的に全国一律に休暇をとるシステムとなっており、春休み・GW・夏休み・冬休みは、どこも時期は一緒ですから、販売しやすい日は、どの事業者も同じです。この確実に予約がいただけるタイミングでしっかりと利益を稼げる施設づくりが、まずグランピング経営の第一ポイントとなります。

次にオフシーズンの集客です。集客の時期によってターゲット層を変化させていくこと、またそのターゲット層に響く宿泊プランや料金プランをタイムリーに打ち出していく必要があります。夏シーズンはファミリー層を中心に、春シーズンや秋シーズンは未就学児童の母親や若者グループを中心に考えていくことがベースとなります。
施設の立地によっても、集客ターゲットは個別に検討する必要がありますので、この点もご興味がある方はご相談ください。

 

最後に、グランピング経営でしっかり利益を出す上で大事なポイントをお伝えします。
それは、「経費をできるだけ変動費化させる」ということです。

 固定費…売上げに関係なく必要な費用(固定人件費・不動産コスト・減価償却費など)
変動費…売上に比例して、増減する費用(クレジット手数料、集客手数料、食材費など)

 

大まかに上記のような考え方ですが、グランピングは費用の大部分を変動費化することが可能です。特に食材提供については工夫が可能で、全国グランピング協会が企画に関わった施設では、施設内で食材の仕込みは一切行わない事業所もあります。
仕込みや調理を施設内で行う前提で事業を組み立てると、どうしても固定人件費が大きくなってしまいます。このような仕組みですと、繁閑の大きいグランピング事業では、閑散期の赤字リスクが高くなります。

食事提供をケータリングのような形に近づけることで、この点は解消できます。
また、客室の清掃費も、グランピング施設間でバラつきが大きい費用の一つです。
予約状況は数週間前から、予測が可能であり、宿泊予約があった場合のみ出勤していただく雇用契約のスタッフを数名かかえると収益性の高いグランピング経営が実現できます。

以上のグランピング経営のポイントをお伝えしてきましたが、より詳細な情報が必要とお考えの方は、ぜひ、本協会にお問合せ下さい。

 


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