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グランピング運営会社(委託先)の選び方~リース契約とMC契約~

近年はグランピング施設が増加し、運営形態も多様化しています。
ホテル業界では一般的な所有と経営の分離パターンがグランピング業界においても登場し始めました。ただ、グランピングとホテルでは、投資対象である資産が持つ性質や運営手法において、様々な相違点があり、委託を検討しているオーナーは注意すべき点がいくつかあります。
今回は、グランピングの運営会社を選ぶオーナーの立場で、注意すべき点を中心に運営会社の選び方を解説したいと思います。

グランピングの運営委託先で注意したい委託先事業者のパターンを整理しました。1つでも該当するダメというわけではありませんが、何かしら不安材料を抱えた運営会社の可能性がありますので、該当した場合は注意が必要です。

こんな運営会社には気をつけよう

1. 施設開発のイニシャルコストの試算根拠が乏しい
2.開発のための法規制に関する知見が乏しい
3.そもそも集客実績や運営実績が乏しい
4.修繕負担区分を明確に提案しない
5.損益計画の費目や予算設定が大雑把すぎる
6.賃貸借契約ではなくMC契約を提案してくる
7.根拠の薄い収支計画を提案してくる

上記のような運営会社には注意が必要です。
それぞれ7パターンの運営会社の特徴や背景を解説したいと思います。

1.施設開発のイニシャルコストの試算根拠が乏しい

グランピング施設のオーナーになろうとお考えの方の中には、施設の設備投資を運営事業者から持ちかけられているケースも多いかと思います。
このケースで特に注意したいのが、投資額(イニシャルコスト)に関する予算設定です。具体的には、建設工事の項目が大雑把で、1億、3000万、5000万などキリのいい数字が羅列されている場合は注意が必要です。
またプロデュース費用やコーディネート料、企画費の類を見積もりに盛り込みまくり、ぼったくりに近いような提案事例もありますので、注意が必要です。
グランピング開発には、土地関係費(造成費・排水施設・インフラ工事費)や建設工事費(管理棟・デッキ・BBQスペース)など、非常に予測が難しい費用があります。
概算予算の設定でも、都市計画課や土木事務所との協議なしに予算を見積もることは、現実的にはかなり難しい作業となります。
グランピング運営会社の中には、案件地を確認しても、協議すべき行政機関すら理解していない事業者もあります。特に都市計画法や自然公園法の規制は、イニシャルコストを大きく変動させますので、これらの規制について何の説明もしない(できない)事業者は疑ってかかった方が良いでしょう。
オーナー側が開発に馴れている事業者であるケースや小規模な計画であれば、問題にならないケースもありますが、土地を新規に購入する話を持ち掛けられた場合は特に注意が必要です。

 

2.開発のための法規制に関する知見が乏しい

グランピングの開業には各種法規制の対応が不可欠です。特に対応に注意が必要なのは、都市計画法、建築基準法、旅館業法、自然公園法、河川法、水質汚濁防止法、農地法、消防法などになります。それぞれの法律に関する説明は、この記事では省略しますが、よくあるトラブルとしては、

・旅館業の許可が下りないエリア(用途地域)で計画を進めてしまった
・建築や開発ができない市街化調整区域で計画を進めてしまった
・土木事務所と協議をせずに開発を進めてトラブルになった
・旅館業の事前相談ができておらず、開業直前でトラブルになった
・自然公園法の規制を知らずにトラブルになった
・インフラ工事や開発許可の存在をしっかり認識せず、過大投資となった

などのパターンが目立ちます。

「安い土地があるので、グランピングをやりましょう」と投資話をもちかけられたケースで、土地を購入したが開業できなかったという事例も実際に存在します。投資を持ち掛けられた場合は、この法律関係の規制について、できれば不動産関係に詳しい方や宿泊施設の開発経験のある方の相談を受けるようにしてください。
全国グランピング協会においても、現在、ドームテントを注文後にトラブルになっている事業者様のご相談を数件受けております。テント販売業者の「売れたら後は知らない」というスタンスも問題ですが、調査を怠らず計画が妥当か確認をお願いします。

 

3.そもそも集客実績や運営実績が乏しい

グランピング業界はまだまだ日が浅く、経験豊富なオペレーターは、ほとんど存在しません。集客方法、オペレーションもホテルとは異なる部分もあります。
集客については、楽天トラベルや一休バケーションレンタル、じゃらんによる集客だけでは不十分であり、これら以外の集客方法を提案できない運営会社に委託するのは、リスクが高いといえます。料理提供についても、一定のノウハウが必要であり、シーズンによってはメニュー変更を行い、それを集客サイトでPRする能力が必要です。
運営・集客実績が乏しい事業者は、できるだけリスクをとりたくないので、必然と売上歩合の提案をしたり、MC方式の提案をするケースが多くなってきます。

 

4.修繕負担区分を明確に提案しない

このパターンも注意が必要です。ホテルや旅館の運営委託では、修繕負担区分を取り決めるのが通常ですが、キャンプ場しか運営を経験していない事業者などは、負担区分を決めるという観点自体が抜け落ちているケースもあります。
また、新興のベンチャー企業の場合も同様のケースがありますので、忘れずに明確化しておく必要があります。
事前に取り決めをしておかないと、施設の不備が発生するたびに費用負担を要求され、投資回収が進まないという事態に陥るリスクがあります。
私どもの全国グランピング協会では、新築する場合は、基本的に建物の躯体部分や外壁など使用状況で劣化の度合いに変化がない部分のみオーナー負担をしていただくというスタンスを推奨しています。逆にウッドデッキやエアコン、家具、家電、床、クロスなどはオペレーター負担が基本という考え方です。

 

5.損益計画の費目や予算設定が大雑把すぎる

収支計画の設定でも運営会社の実力を見抜くことはできます。

まず、月次売上高の設定に違和感がないかという点です。グランピングは夏や秋がハイシーズンで冬はオフシーズンになる繁閑の大きい業態です。当然、売上高だけでなく、稼働率、客室単価も変化をします。

年中、同じ客室単価を設定している運営会社を見かけたことがありますが、このようなケースでは、経験が乏しいと判断した方がよいでしょう。実際、単価の設定は細かく変更しないと、オフシーズンの集客はできません。
また、人件費などの項目で、法定福利費や被服代、交通費、賞与などを細かく検討できていない収支計画やクレジットカード手数料や集客手数料が抜け落ちている収支計画もよく目にします。実際の運営経験があり、損益を絶えずチェックしてきた経験がなければ、しっかりとした収支計画は組めません。

 

6.賃貸借契約ではなくMC契約を提案してくる

固定賃料のリース方式ではなく、MC契約(マネジメントコントラクト方式)を提案してくるパターンも注意が必要です。
MC契約と類似した契約方式として、運営リーダー派遣方式や支配人派遣方式、売上やGOPの数%を歩合方式で求めるような形態も同様に注意が必要です。
これらの契約形態を運営会社が提案してくる背景には、自分のリスクを最小化するという魂胆が隠れていることが多いからです。
ホテル業界では外資系ホテルを中心にMC方式は標準的な契約方式ですが、集客力を担保できるブランド使用料も対価に含まれることが多く、玉石混交のグランピング業界とは事情が異なります。
これらの契約方式はオーナーのリスクが高いと言わざるをえないかと思います。

 

7.根拠の薄い収支計画を提案してくる

現状では、グランピング施設を2つ以上、運営している事業者は国内に片手ほどしかありません。開発から集客、運営まで自社で行う企業はもっと少なくなります。
仮に上記の運営経験のある事業者であっても、1つ目、2つ目の運営施設の売上や利益を再現できる保証はありません。多くのケースでは、既存運営施設の好調要因が運営会社の実力によるものでないケースが多いからです。
集客ノウハウや実績の根拠を示せない運営会社にあてはまるケースです。

私共の全国グランピング協会グループで直営しているグランピング施設では、売上高対営業利益率が50%を超えている施設がいくつかありますが、収支計画上では30%程度におさえて提案をさせていただいています。また、売上計画もドームテントであれば、年間1棟当たり1500万円~2000万円の実績もありますが、基本的には900万円~1000万円で予算を組みます。
絵にかいた餅のような収支計画を組むと、イニシャル投資も大きくなってしまう傾向がありますので、十分、注意してください。

 

最後に

そもそも論ですが、私共はグランピングが所有と経営の分離に向かないビジネスではないかと考えています。
理由は投資して作られたグランピング施設は、数年経過すると無価値になるためです。
テントやウッドデッキは10年もすれば、経済価値はほとんどゼロに等しいと考えるべきかと思います。ホテル投資であれば、ホテルという建物には一定の価値がつきます。
この点がホテル投資とグランピング投資の大きく異なる点です。
また、土地部分とグランピング設備部分の投資金額の割合についても、土地部分が多くなる場合は、土地は減価償却費がとれませんのでオーナーの節税効果は限定的です。
この辺りは考え方が色々とあると思います。

いずれにせよ、運営会社を選択する際は、「まずは誠実であること」、「デメリットをはっきり伝えてくれること」、「投資や収支計画の根拠をはっきり提示してくれること」は、はずせないポイントかと思います。
私共も日々勉強の身であり、毎日、壁にぶつかったり、ハードルに躓いたりばかりです。ただ、事業に関係する方に迷惑をかけない、常に誠実であることをモットーに日々、進化を続け、それなりの知識や経験を積んできました。

運営施設も直接投資のものあれば、リース方式の施設もあります。そのあたりの考え方やポイントについてもお伝えできることがあるかと思います。
現在、グランピング投資を検討されている方でお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 


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