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グランピング開発における建築基準法(建築確認)

グランピング開発では、建築基準法への対応は重要ポイントとなります。
特に近年、急増していますドームテントやトレーラーについて、ご相談を受けるケースが多くなっています。
全国すべての土木事務所の共通見解ではありませんが、数十か所の土木事務所でいただいたご回答をふまえ、事前協議のポイントをお伝えします。

*このサイトで記載されている内容は、全ての土木事務所の見解という保証はありませんので、グランピング事業をお考えの事業者は必ず、事前協議に行っていただくようお願い致します

 

テントやトレーラーは建築物に該当するのか

そもそも、運動会やキャンプ場で建てる日除け用テントや設営が簡単な寝泊まり用のテントは、建築物に該当しないことは明らかです。
また、夏季などのハイシーズンに設営されるコットン生地のテント(アスガルドシリーズやキャンバスキャンプなど)についても、同様の判断が行われています。
テントで協議が必要となり、土木事務所への説明が重要なのが、昨今、急増しているドームテントです。

 

建築基準法の法第2条第1号における「建築物の定義」

まずは建築物の定義について確認したいと思います。

建築基準法の第2条第1号では、
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

 

建築物とは、土地に定着していて、屋根があり、柱がある工作物
もしくは、
建築物とは、土地に定着していて、屋根があり、壁がある工作物

と解釈することができます。この中で特に重要なのが土地への定着性と屋根の有無です。

 

ドームテントは「建築物」に該当するのか

さて、本題のドームテントに関する協議について説明します。
「ドームテントが建築物に該当するか否か」
これは結論から申し上げますと、2020年シーズンからは、「使用状況による」というのが、正解になったようです。つまり、どちらもありうるということです。

2019年シーズンまでは、「小規模で外幕を容易に取り外しができるテントは建築物ではない」という“建築基準法総則と判定事例”の記載通り、ドームテントは建築物ではないという判定が多く下されていました。

ところが、2020年シーズンからは、「一時的な使用を目的とした」の記載が重視される傾向となっています。具体的にお伝えしますと、断続的かつ半永久的にドームテントを設置する場合は建築物に該当する可能性があるという判定が多くなったということです。

大半のグランピング施設では、グランピング用テントは、大型台風や豪雪の際には解体撤去をする前提があります。また、ドームテントの場合は、天幕をクリーニングする際に、頂点部分の清掃には、天幕の取り外しが必要となります。

土木事務所には、この前提条件をしっかり説明することが大切です。
多くのドームテントは海外製であるがゆえ、建築物との判定を受けた場合は、構造設計のエビデンス獲得や防火面でのエビデンスを収集することは事実上不可能であり、設置は不可という結論となります。

 

土木事務所によって対応が変わることもある

あるドームテントの輸入代理店が、複数の土木事務所との協議でトラブルを起こしたことが原因で、該当する土木事務所のエリアでは、協議を慎重に行う必要があります。

年に1度は必ずテント解体撤去することを求められたり、保健所での旅館業許可の事前協議で、土木事務所で「どの担当者と協議したかを報告する必要」があったりというケースも出てきています。

大阪市、神奈川県、北関東、中国地方、九州の一部の土木事務所では、もともとの基準が厳しめであったり、初めて協議を行った事業者の対応に問題があったりで、建築物の判定を受ける可能性が高いエリアもあります。
このようなエリアでは、海外製のドームテント以外でグランピング施設を検討した方がよいでしょう。もし、エリアの詳細についてお知りになりたい場合は、お問合せ下さい。

いずれにせよ、真摯に丁寧な説明をすれば、土木事務所の方も前向きに応じていただけることが大半です。特に昨今はコロナウイルスで既存の宿泊事業者は壊滅的打撃を受けており、グランピング参入を検討する企業も増えています。また、政府が後押ししている地方における観光拠点整備の重要性は広く知れ渡り、その過程でグランピングが注目を集めていることも周知されるようになってきました。

当然、土木事務所の建築主事もこのような背景は理解されている方が多く、ケンカ腰の交渉ではなく、丁寧に説明すること、場合によっては資料を準備することで視覚的にも理解をしていただく工夫を行えば、スムーズにいくケースが大半です。

若干専門性のあるテーマですので、自信がないと感じられる方はお問合せください。
土木事務所(建築指導課)への説明ポイントや資料については無償で公開させていただいております。

 

建築物との判定を受けそうな場合の対応について

仮に「建築物に当たる」と回答をもらった場合のケースについてお伝えします。
建築確認申請を取得することが難しい場合でも、確認申請で重要なポイントとなる換気能力について説明をする必要があります。換気については、建築基準法で求められる要素と消防で求められる要素で違いがあります。

前者の場合はハウスシック症候群などのアレルギーに関する対応であり、後者は万が一の火災発生時の排煙機能に関する対応となります。
今まで、該当したケースはありませんが、排煙窓に相当するベンチレーションと呼ばれる小窓の位置やエアコンを換気能力(動力換気)があるタイプを採用するなどの対応で協議をしていく必要があります。また、国産のドームテントに切り替えるなどの措置も検討材料に当たると思います。天幕やカーテンなどの付属物の防火性能が対応しやすくなります。

 

エアコンの設置について

エアコンについても、室外機がある兼ね合いで、土地への定着性が指摘されるケースがありますが、テント膜や骨組みに直接、接着しないのであれば、定着性があるという判断には至りません。
第一、猛暑日が当たり前となった昨今では、エアコンの室温調整の機能の有無は人命に関わるケースもあります。
夏場の利用が多いグランピング施設では、利用者の安全のためにも、この点はしっかり説明を行う責任があります。

 

その他、誤解が起きやすい事例(トレーラーや建築面積について)

「床面積が100㎡を超える場合には、必ず建築確認を取る必要がある」と記載しているWEBサイトもありますが、建築確認が必要か否かは都市計画区域内か区域外かという点で判断が分かれるので、誤解のないようにお願いします。

また、「トレーラーは車両であり、無条件で建築物に当たらない」と記載しているWEBサイトが複数ありますが、これも間違いです。
ログハウスキットやトレーラー、コンテナハウスは基本的に建築確認が必要なケースが大半です。
トレーラーであれば、自走ができる状態で排水設備と浄化槽が着脱可能であれば、建築確認は不要という判断になるケースが多いです。ただし、公道を走れる性能を有している前提が必要です。
厳密には、任意に移動することに支障がある階段、ポーチ、ベランダなどが取り付けられているもの、また給排水設備やガス、電気などの配管や配線が着脱式ではない場合は建築物の判断となるケースが多いというのが正解です。また、車検(車幅2.5m以上の場合は特殊車両通行許可証が必要)の取得がない場合も同様の判断となるケースが多くなっています。
コテージやキャビンなどの建築物前提の場合、都市計画区域外で開業を検討する場合、確認申請は不要ですが、工事届は必要であり、建築基準法に適合した安全性は求められています。

 

おわりに

法律や規制は利用者の安全を担保するために国が定めた基準です。
仮に建築確認が必要であろうが、不要であろうが、利用者の安全はないがしろにしてはならない問題です。
グランピングは自然を身近に感じ、楽しむためのもの。
だからこそ、グランピング運営会社には、より高次元の対応が欠かせないと思います。
超大型台風や津波など、誰もが想像できない事態にも、対応できるだけの知恵や備えが重要だと感じています。

 


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